【連載第5回】やり残した滝を目指して〜奥多摩源流域で衝撃的な結末〜【渓流釣り】

さて、こちらの管理人さんと違い、同じ川を味わい尽くす自分にとって、ひとつ心残りがある川を挙げるとするならば、こちらのコラム第2回でご紹介させていただいた「イワナの楽園」なる川である。

都合により川名は伏せさせていただくが、その日は初めて訪れたためにペース配分がわからず、手の届く距離に迫る魚止めの滝を前にして、時間切れにより断腸の思いで帰路についた川だ。

7月下旬、そのモヤモヤを解消すべく、その川へ約2ヶ月ぶりに訪れてみた。

平野部は猛暑日が続く暑さの中、標高1000mを越えた奥多摩の源流域は清涼感を通り越し、若干 軽装を後悔する冷涼感であった。

まだ暗い午前3時半に家を出て奥多摩入り、目的地までギリギリ車で行ける場所から、今度は徒歩で約1時間、距離にして5kmの林道をひたすら登り、沢に降りる頃にはすでに6時を回っていた。今回の目的は先述の通り、前回やり残した滝への挑戦である。この滝について教えてくれた知り合いの「かつて50cm超えのモンスターを見た」という言葉に胸の高鳴りを抑えられないと同時に、「遥か昔の話だぜ、まぁ落ち着けよ」と現実的な思考が混在する中、とにかくロマンはあるだろうと、途中のポイントはランガン(run&gun)な感じで行こうと決意。しかし出だしから何やら不吉な予感……。

滑落か? 鹿の亡骸である。

とにかく道中、YouTube用に1匹でも釣って最低限の撮れ高を確保し、あわよくば目的の滝でビッグヒット!といきたいところではあるが、今年は行く川の全てが渇水気味。そのせいもあってか魚影がとても薄い。

この日、最初に魚影を見たポイントはワンチェイスのみ。とても警戒してる様子……。

今年の梅雨は歴史的な少雨で、奥多摩のある東京においては例年の30%程度しか降っていないそう。そんな渇水の影響か?はたまた先行者か?なかなかファーストフィッシュが出ない焦りの中でようやく1本出ました。

サイズは20cmちょっと、青田刈りはしません。大きくなってください。

本日もお持ち帰りルールはシンプルに①25cmを超え30cmに満たない個体②食べる分2匹まで、あくまでマイルールなので、お気になさらず。

さらに進んでここは実績ポイント。前回リリースした子かな?

こんな感じでサクサクと進み、前回29.5cmの泣き尺イワナを釣り上げたポイントまで到達。このポイントの上に今回の目的である魚止めの滝が鎮座する。

だがその前に前回リリースした29.5cmが尺超えになって現れないか?という淡い期待を込めてキャスティング。今回から本格導入したドローン撮影のもと、ヒットすればYouTube再生数が爆上がりの予感だったが、さすが「こんな時に持ってない男」、痛恨のバラシでこのポイントは終了……。

さて、道なき道を行く山岳渓流の遡行において、最も注意を払いたいのが滑落であろう。落石や増水、野生生物との遭遇、遭難などは、予兆や予防、事前計画などで最悪の事態を回避できそうだが、こと滑落については慢心や散漫など、自分自身に問題があることがほとんどで、ソロ釣行ならなおさら慎重を期すべきである。なので自分の場合「生きて帰りたけりゃ無理するな」「自分が思うほど身体は若くない」のスローガンを常に唱え続けて釣り上がる。

ちなみに余談だが川の左右、「左岸」「右岸」は川の上流から下流を見てのことなので、下流から釣り上がる場合は左右が逆になるので注意が必要だ。2人以上のパーティで釣行する場合、この認識の違いから思わぬ事故になる事も予想される。

さて、くだんの滝を目前にし、厄介なのが遡行ルートである。右岸が途中で「詰み」と予想されるので「左岸」から行くことに。しかしこのルートも実に厄介で、スタンス(足場)やホールド(手がかりになる突起)がとても少ない。無事に帰ってきた今だから言うが、おそらくもう二度と行かないだろう。そんな場所であった。

それでもなんとか目的の滝に辿り着いた時の達成感は感慨深いものがあり、この歳になってなお、そこはかとない成長すらも感じ得た。

残念ながらこの滝も水量は少なく、モンスターはおろか尺超えすら姿を見せなかったが、オレンジベリーがしっかり乗った23cmの居付きイワナに出会うことができた。

その後このポイントで2匹、合計3匹を釣りあげた。

時間にして30分くらい夢中で釣りを楽しんだあと、恐怖の瞬間が訪れる・・・

熊の亡骸である。今の今まで気づかなかった愚かさと、背筋を切られたような戦慄。

体長は約1m、もし立ち上がりでもしたなら1.5mはあろう個体。

さらに恐ろしいのはこの熊、「頭部が無い」

明らかにスパッと、それだけが無い。

この滝で一体何があったのか……。

と同時に思った。「撤収かな」と……。

かくて今回の釣行は全て熊の話題に持って行かれた感が否めない。大自然のリアルを目の当たりにして、およそ人間の思考では計り知れない何かがそこにはあった。

「伝説の首狩族は実在したのか?」とか、「数メートル先にある熊の亡骸の横で釣りをしている自分に向けて、客席から『志村うしろー!』と叫ばれていたのでは?とか……。

様々な思いが脳内を駆け巡るなか、無我夢中で帰路につき、ようやく車まで辿り着いて平地の暑さに身体をつつかれた時、今日も無事に帰ってこれたと安堵するのであった。

それでは本日の釣行はこれにておしまいです。

また次回お会いしましょう。

※管理人より/
本記事の初公開は2025年8月16日です。
今回の記事の動画はこちら↓

執筆者のプロフィール

浄渓
浄渓
埼玉在住
奥多摩や奥只見を中心にルアーフィッシングを楽しんでます。テレスコロッドを片手に山深い沢を遡行するのですが、どうも最近、足の筋肉の衰えを感じ始め、釣り後に激しい筋肉痛に苛まれる今日この頃・・・
釣りに行かない休日はもっぱらメダカのお世話という寂しいアラフィフです(^O^)
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