私の釣り活動の発信は、YouTubeチャンネルと、こちらのコラムでおこなっていますが、例えば釣行の釣果が芳しくなくても、コラムであれば、釣果以外の情報やその日の情景などを、私の適当な文章力でも「鬼補正」がかけられるのですが、ことYouTubeに関しては動画であるが故に「撮れ高」が全てです。
今シーズン、これまで2回訪れた奥多摩では、釣果1匹づつと、惨憺たる結果に終わってしまい、それでもコラム的には上手く立ち回れたと思いますが、YouTubeに至っては、いよいよ正念場、ここで巻き返しが図れないとチャンネル存続の危機!なーんて、吹けば飛ぶようなアカウントが勝手な妄想を繰り広げるのであります……。
しかし実際問題、釣りに行って「釣れない」のは悲しいことで、今シーズン3回目の釣行は確実な成果を求め、とても深ーい山奥へ足を運んだのでした。

7月1日AM6:19奥多摩の某所。
標高1000mを超える林道で一息ついている私は、今まさに「東京で1番、リアルな涼を感じている男」と言っても過言ではないだろう。
気温は「20℃に達するかどうか?」といった冷涼さだ。
かろうじて空が伺える林道から、鬱蒼とした登山道に入り、川に着いて水を間近に感じる頃には、さらに気温も低く感じられた。

約1年ぶりに訪れたこの川での目標はやはり撮れ高、「YouTube目的で釣りをするな」という先輩ユーチューバーの言葉が脳裏をよぎる中、全てを掻き消すようにGoProを回し始める。
2つの台風が立て続けに日本列島を横断し、ここ2日間大雨だった関東地方、ここ奥多摩も例に漏れず、川の水も増水傾向、いやしかし渇水よりはいい。
この川は目的の魚止めの滝までそんなに距離がない。ゆっくり釣り歩いても4時間くらいだ。
小さなポイントも丁寧に探って行こう。
使用するルアーはINVITEのACT「グリーム」、山形の若手アングラーが実釣と改良を重ね、トライアンドエラーの果てに生み出された人気ルアーだ。

入渓からしばらく釣り歩くが魚影が薄い。
「ここにおらんかぁ……」というポイントで、過去2回の苦い釣行が脳裏をよぎる。
まずい流れだ。
アップストリームキャストで反応が無かったこの〝諦めきれない”ポイントで、ダウンキャストに変えた1投目でようやくヒット!
「やっぱ居るよね〜」と思わず声が出る。

25cmほどのイワナがランディングネットに収まった瞬間、苦い釣行の記憶は綺麗に上書きされた。そしてあらためてこの川の持つポテンシャルに心が躍った。

私は基本的に奥多摩で釣れた魚はリリースしている。理由は簡単で「個体数が少ないから」だ。別に私1人がそんな事をしたところで資源回復につながるとも思っていないし、入漁券を買ってなお魚を持ち帰らない愚行を嘲笑する人間がいる事も重々承知している。
しかし私自身が「釣り」というアクティビティをこの奥多摩で長く楽しむ為に、自らに厳しい縛りをかけることで、妙な後ろめたさから開放される、ただそれだけの為だ。

やはり最初の1匹が出るとなんとなくホッとする。妙な焦りが無くなり、心にも余裕が生まれる。必然とキャストも丁寧になり、ピンポイントキャストも決まるようになる、そんな時だった。15m先の対岸近く、大岩のエグれに吸い込まれたルアーを、イワナは着水とほぼ同時に咥えたようだった。

これも良いサイズだ。しかも太い。15m先の住処に無事に戻れることを祈ってリリース。

次のポイントは流れが緩く、浅めだが広いエリア。際にある岩を狙ってキャストすると2匹のイワナが我れ先にと猛チェイス、ルアーフィッシングの醍醐味だ。

仲間との競争に勝ったイワナは、見方を変えれば私との勝負に負けたという皮肉な世界、私は本日3匹目のイワナを無事ランディングした。
この場所に居着いているイワナか?輝かしいほどのオレンジベリーだ。

1年ぶりの川ではあるが、印象深いポイントは鮮明に記憶に残る。前回、大きな魚影を見たが、ルアーが根掛かりし、泣く泣く潰したポイントだ。キャスト後に、比較的高速でリトリープしないと駆け上がりで急に水深が浅くなりボトムノックしてしまう。同じテツは踏むまい、そう言い聞かせて早巻きをすること2度、今日1番のバイトがロッドに伝わった。

色白で美肌のイワナだ。この沢のイワナは場所々で表情を変えてくれ、見た目でも楽しませてくれる。

警戒心が強いと言われるイワナだが、バレても果敢にアタックしてくる猛者もいる。
ちょっと頭のネジが外れたヤツという表現が正しいのか?
釣っているコチラとしては面白い。そのポイントでも1度針にかけたがバレてしまい、もう無理だろうと諦めかけた瞬間があった。
ダメ元でキャスティングすること2回、やはりルアーに未練があったのか、2度目のフッキングに至った。

このポイントを最後に魚の姿をトンと見かけなくなった。
単に魚が居ないだけなのか?
私の引き出しが少ないのか?
そんなこんなで目的の魚止めの滝に到着した。
正直このポイントには期待をしていたが、やはり魚の反応はなかった。
本当はこの滝を巻けばさらなる大滝があるのだが、非常に危険な行程であるということと、単独釣行ということもあって無理せず納竿とした。
帰り道、登山道での事。スマホに1本のメールが届く。
こんな辺境の山奥で電波が届くはずもないのだが、私のスマホにはキャリア通信の「主回線」と衛星通信の「副回線」の両方が備わっており、テキストメッセージくらいであれば通信ができる。
所謂「スターリンクダイレクト」だ。
この件りは別の機会に紹介できればと思う。
さて、届いたメールを開くと嫁からであった。
どうやらイワナの塩焼きを楽しみにしているらしい。
しかし残念ながら釣った魚は全てリリース済みで、持ち帰る魚は無い。残念!

しかしそんなこともあって、朝に入渓したポイント付近まで戻っていた私は、普段は竿を出さないポイントで念の為やってみることにした。
時間に余裕はある。
もちろん釣れれば嫁の土産にするつもりだ。
「奥多摩の魚はリリースするはずでは?」と突っ込まれそうだが例外もある。
「長く釣りに行かせてもらう為」に、止むを得ない行為だと言い聞かせ、かつて竿を出すが1度も魚影を確認したことのないポイントへ「魚がいない事を確認」するためにキャストする。
だが予想に反して1投目からチェイスを確認、流れのせいで水中が伺いにくい中でもハッキリと確認できる巨体、しかも2匹、心臓が高鳴った。
1匹でいい、奥多摩よ、生贄を差し出してくれ。
そう願いながらキャストした4投目、
心音のビートが最高潮に達する、
黒い魚影の猛烈なチェイス、
喰った!
ロッドに伝わる重い躍動、間違いなくこの日1番のイワナだと確信する。

Screenshot
釣った瞬間に「尺越え」と感じた手応えは、意外にも28cmだった。だが嫁へ差し出す生贄としては十分なサイズだった。

Screenshot
ひとまずランディングネットを生簀(いけす)がわりにし、再度タックルを掴んだ。
そう……「確かもう1匹いた」。
あれから少しだが時間を置いている。場は平和を取り戻したハズと言い聞かせる。
先ほどと同じポイントにキャストした。
流れの中に黒くゆらめく影、まだいる。再びキャスト、ルアーを追う巨躯、デカい、これもデカい……。

Screenshot
それからしばらくキャストし続けたが、再びヤツが姿を表すことはなかった。
完全に見切られたと確信し、今度こそ納竿。
さて先ほどの獲物を記念撮影し、ありがたく持ち帰らせていただこう。
魚の元へ向かう足取りは軽かった。
この土産を手に、嫁の釣りへの理解を得る。
奥多摩よ、ありがとう!
しかしそんな算段は一瞬にして露と消えた。ランディングネットはもぬけの殻だった……。

Screenshot
「一度は釣られた」という事実だけを残してイワナはみごと脱走に成功した。
相手も必死だ、生かされていれば逃れるために死力を振り絞るに決まってる。
ただこれで「奥多摩の魚はリリースする」という自らの縛りは、妙な形ではあるが果たされた。複雑な気持ちだが、少しだけ安堵している自分がいた。
嫁よすまん!塩焼きはお預けだ!
※管理人より
本記事の初公開は2026年9月2日です。
また、釣行の動画有です↓
執筆者のプロフィール

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埼玉在住
奥多摩や奥只見を中心にルアーフィッシングを楽しんでます。テレスコロッドを片手に山深い沢を遡行するのですが、どうも最近、足の筋肉の衰えを感じ始め、釣り後に激しい筋肉痛に苛まれる今日この頃・・・
釣りに行かない休日はもっぱらメダカのお世話という寂しいアラフィフです(^O^)
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