【連載第11回】南会津単独釣行記【渓流釣り】

みなさん渓流釣りはソロで行かれますか? それとも2人以上で行かれますか?

自分は釣り仲間が少ないのと、平日休みということも相まって、大体がソロ釣行となるのですが、年に数回訪れる南会津へは、(誠に勝手ですが)自分の休みに合わせてもらい、必ず2人以上で行くようにしています。

その理由は、日頃よく行く河川に比べて危険度が増すからということではありません。危険度という点では、急峻な奥多摩や秩父、群馬の方がはるかに危険だと思います。あぁ熊だろうって?イヤイヤ、熊なんて山があれば大体どこにでもいますよ(笑)だったら何でか?

遠いからですよ……。

車で4時間半以上かかる車内での1人は、なかなかに退屈です。歳も歳なので運転もしんどい。おまけに峠道の深夜走行は対向車も皆無で、寂しいを通り越して恐怖です。
で、いつものように地元の大先輩にお声がけしたのですが予定が合わず、もう1人のアテも仕事が休めずで、ここに単独釣行が無事確定したのであります(泣)

職場を18:30に出発して、圏央道から東北道、那須のインターを降りたところで、ようやく道のり半分。

南会津へは、ちょっとだけ早い関越の新潟経由で行くルートもありますが、恐怖の峠道が1時間も続くので今日は回避。何せ地元の方が「夕方を過ぎたら近づかない」というほどですからね。その恐怖たるや推して知るべし。
かくして定宿の敷居を跨いだのが23:00、道中、降り続いた雨は止んでいた……。

一夜明けて天気は曇り、宿の前を流れる本流は薄濁り、これでも宿の人曰く、「昨日まで釣りは無理だと思ってた」というほどの濁流だったそう。まぁ私が入るのは遥か上流の支流なので、濁りの影響は少ないはず。

この叶津川は只見川の支流にあたり、管轄の漁協は伊北地区漁協で入漁料は破格の¥1,000.!

とはいえ、30年以上通って漁協の方にお会いしたことなど一度もなく、私が入る沢を果たしてこの漁協関係者の何人が知っているのか? 甚だ疑問である。

時刻は6:00、目的の沢の入り口に到着する。

舗装路から先、ここからはいつものように「ゼンマイ道」を利用させていただく。

地元の方達が山菜を採るために長年使用している秘密の道である。長年に渡り踏み叩かれたゼンマイ道、日光の届かないブナの森の中はさほどでもないが、森の切れ間は日当たり良好で、放置しておけば雑草も人丈に迫る勢いだ。

そんな山深い森の中のゼンマイ道を、生活のためとはいえ、エンジン付きの草刈機を背負い、定期的に管理をされている地元の人の姿を想像すればするほど、「入漁料はそちらに回した方がいいのでは?」と思ってしまう。

宿の人の話では、ちょうど私が森に入る前日に草刈りに入ったらしい、という「噂」である。実にありがたい……。

7月中旬の南会津は、昨日までの雨の影響もあり、気温こそ23℃くらいと、数字だけ見れば低めだが、身体にまとわりつく湿度のお陰で若干蒸し暑い。歩くたび、森の中のゼンマイ道に熊鈴の音が小気味よく響き渡る。


汚れを知らない手付かずの大自然、時の流れに取り残された静寂の世界……。

このゼンマイ道を歩いていると、まるで別世界に続く秘密の道のように感じ、人間の世界ではない場所に踏み込んでしまったような、畏れにも似た緊張感を覚える。

 

ゼンマイ道を歩き始めて十数分、次第に川の音が大きくなってきた。

入渓ポイントが近い。

残置ロープを使い崖を降りる。おそらく今までの釣り人生で最も多く入渓した沢にして、初の単独釣行。喜びも悲しみも全て独り占め。不安がない訳ではない。しかしその不安を、ワクワク感が完全に上回った朝の6:30であった。

いつ雨が降ってもおかしくなさそうな曇天だ。

この辺り南会津を流れる川のほとんどは、尾瀬などの湿原を起点とし、広大な天然林の土壌を通過することから、腐食した落ち葉や泥炭質などが溶存した有機物の影響を受け、水質的に若干ではあるが「薄茶色」をしている。

そのため、つまり何が言いたいかというと「ルアーが見にくい」のである。

しかも曇天が重なることで、リトリープされたルアーの軌跡を目で追うことが、なおさら難しい状況なのである。そのためオープニングに選んだルアーがチャートバックとなるのは、当然といえば当然だ。

さぁ!いよいよ釣り開始だ。

「はるばる埼玉から5時間かけなきゃ魚は釣れないのか?」と身内に揶揄されながら辿り着いた楽園。訪れる釣り人がほぼいないので、入渓から即キャストできる喜び。

ほら!もう魚が純粋である。

ヒットに至らなくてもチェイスは頻繁、こんな浅場にはいないだろうと、やり過ごした瞬間に足元をスッと横切る魚影、もう全ての岩に着いているんじゃないか?と思ってしまう……。

この連載が来年も切られずに続いていれば、その機会に語ろうと思いますが、今年2026年をもって、楽園と呼ぶにはおそらく「最後」となるであろうこの沢を今日は存分に楽しみたい。

釣り開始から15分くらい経ったところで絶好のポイントに差し掛かる。

おそらくイワナの棲家であろう大岩の手前に小ぶりな岩が配置されており、イワナからこちら側が見えない。「大岩から少し離れた上流へルアーを落としリトリープすれば、大岩から『スッ』と出てくるのでは?」と、イメージは完璧、そのイメージをトレースするようにキャストする。

大岩から少し離れたところをルアーが通過するや否や「ガツン!」という手応え!

25cmオーバーのイワナがランディングネットに収まった!

ルアーフィッシングはホントに楽しい!

3年前まではエサ釣りのアングラーだった自分が、思うところがあってルアーに転向したのは、エサというべきルアーを自分で操作できるところと、そのルアーをチェイスする魚を目視できるドキドキ感、これに尽きる。

そして今日1番盛り上がったのは、その全てが凝縮されたシーンだった。

エサ釣りでは絶対に届かない10m以上先のポイント、キャストされたルアーは着水と同時にユラユラと深く沈んでいく、深場に潜んでいるであろう魚にしっかりルアーをアピールし、リトリープ開始! トゥイッチを入れながらゆっくり巻き、ハンドルを止めてフォール、再びリトリープ、やがてルアーは浅場に到達、イワナが追ってきている。しかし焦らない。トゥイッチを入れながらルアーに不規則な動きを入れ、イワナの捕食本能を刺激する。もうルアーは私のすぐ目の前まできているが、イワナはルアーに夢中でこちらにはまったく気づいていない……。

嗚呼こんな目の前でイワナのリアルな捕食行動が見られるなんて、だからルアーはやめられない!

そして次の瞬間、ついにイワナがルアーを捕らえた!

23cmと小ぶりだが、テールフックにガッツリと食らいついていた。

25cmを超えていれば塩焼き用にお持ち帰りするという個人的なルールなので、ここはリリース、大きくなってまた遊んでね〜。

この時期の風物詩、岸壁に群生するキンコウカは見事である。陽が降り注ぐ源流域の釣行では、こういった自然観察も楽しみのひとつだ。普段訪れる奥多摩や上野村などの鬱蒼とした源流にはない光景に、やはりここは楽園だとあらためて感じる。

そして本日の目標である魚止めの滝に近づいた。

3段プールの1番下を下流から攻めるも、20cm程度のチビ1匹だったので、思い切って上に回り込んでみた。恐らくこれまで届かなかったのであろう、落ち込み真下の深場へルアーをフリーフォールさせてみると……。

思わずギョッとする巨大な魚影が一瞬だけルアーにアタックしたが、すぐに姿を消した。30cmなんて優に超える巨体に、今日初めて心臓が高鳴った。

その後、何度もルアーを通すが反応はなかった。あのサイズに達するのに5〜6年はかかるだろう、つまりは百戦錬磨、ここにきてイワナの警戒心の強さをあらためて思い知った……。

時刻は13:00を回り、時間的にも最終ステージとなる魚止めの滝に到着……。

この滝、魚は確実にいるのだが、どうもここ数年、サイズに伸び悩んでいる。訪れるたび、当たり前のように尺越えを目にしたのも、今は昔。

今回、願わくばここでドラマティックに大物を!と期待するが……。

ギリギリお持ち帰りサイズが2匹……なので、欲を言えばこの大滝を高巻きし、さらに上を目指したかったのだが、単独ということと、時間的な問題から、断腸の思いで撤収を決断した。

さて、帰りは来た道を戻るだけ、つまり川を下って帰るのだが、消耗し切った身体に川下りは少々キツい……。

朝は森の中のゼンマイ道を途中で降りて入渓した。つまりゼンマイ道にはその先もある。

どこまで続くのか?

帰り道のどのあたりから再び入れるのか?

これを知っていると川下りをせずに帰れるのでとても助かる。

派手に爆竹を鳴らし、人間が通ることをアピールするのを忘れずに、特にこの森を抜けた先には人丈ほどに伸びた雑草地帯を通過することになる。

「見通しゼロ地帯」を通過するのは正直怖い。しかし宿の人の話だと昨日、草刈りに入ったという噂だ。

これはラッキーだ!

そう思って森を抜けたら……。

足元が見えない恐怖、何せ右側は崖だ。1歩1歩、足元を確かめながら、なおかつ周囲への警戒も怠らないよう歩を進める。そうしてなんとか難所を切り抜けたのであった。

今日1番の緊張感から解放された瞬間だ。

そして思ったより早く、朝入渓したポイントまで戻れたので、往生際の悪い私はそこから今度は釣り下りで「ちょっとだけ」遊んで帰ることにした。

今日初めてのダウンキャスト、最後に可愛い1匹がお相手してくれた。

狙ってた大物は釣れませんでしたが、それでもたくさんの魚たちに遊んでもらった。

私が来ると高確率で雨に降られるのだが……。おおむね天気にも恵まれて今日も無事に釣りを終えることができた。

年に何度も来られる場所ではないので、この景色をしっかりと目に焼き付けながら帰りたいと思う。気がつけば涼を求めて高地にやってきているアキアカネが無数に飛んでいた7月の南会津だった。

※管理人より/本記事は動画ありです↓


※本記事の初公開は2026年10月7日です

執筆者のプロフィール

浄渓
浄渓
埼玉在住
奥多摩や奥只見を中心にルアーフィッシングを楽しんでます。テレスコロッドを片手に山深い沢を遡行するのですが、どうも最近、足の筋肉の衰えを感じ始め、釣り後に激しい筋肉痛に苛まれる今日この頃・・・
釣りに行かない休日はもっぱらメダカのお世話という寂しいアラフィフです(^O^)
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