趣味人に聞く 釣り編 其の六 クニさんの巻
クロダイ、かっこいいっすよね。いや、俺は釣ったことはないのですが、本当に一度は釣ってみたい、そして精悍なフォルムをこの目で見てみたい……。そのためには、まずはクロダイ釣りのことを知らなくては! 今回の達人はクロダイをこよなく愛する人気ブロガー・クニさんです。クニさんは落とし込み釣りという釣法をメインに楽しんでいて、そのハマリっぷりは、かなりのものなのです。
取材・文/管理人
写真/クニさんのご提供&クニさんのブログに掲載されているもの。無断転載は禁止とさせていただきます。
クロダイの落とし込み釣りには三つの釣法がある
まず、本編に入る前にクロダイの基礎知識をおさらいです。クロダイは成長とともに呼び名が変わる出世魚で、東日本ではチンチン→カイズ→クロダイ、西日本ではババタレ→チヌ→オオスケクロと変化します。ただ、最近は関東でもチヌという呼び名は耳にすることが増え、クロダイ(チヌ)をルアーで狙うチニングは全国的に人気を呼んでいます。
さて、それではクニさんに突撃取材。クニさんのブログはとても充実していて、クロダイの写真もたくさんアップされています。いやぁ、クロダイ、やはりかっこいいっすなぁ。
「ですよね。僕も大好きで、年間100回以上はクロダイ釣りに出かけます。雨にも負けず、雪にも負けず……です」
まさに釣りバカですね(笑)。
「クロダイにどっぷりですわ。いきなりですが、できるだけ多くの方に、クロダイ釣りを楽しんでいただきたいので、その魅力からお話しさせてください」
どぞどぞ。
「まず、僕が思うには、クロダイは手軽に堤防から釣れる魚のなかで、もっとも引きが強い魚です。なおかつ管理人さんも絶賛しているように見た目も最高にカッコイイ! そして、短めの竿で足元でかけるのでいきなり強烈なツッコミと引きをダイレクトに楽しめます」
おぉ、本当に楽しそう。でも、ちょっと敷居が高い気が……。
「いえいえ。特殊な釣りに見えるかもしれませんが、やろうと思えば、専用の竿でなくても釣ることができます。できれば竿先の柔らかいものがよいですね。例えばシーバスロッドとスピニングリールでもできないことはないと思います。でも、釣り具もこだわると、もっとクロダイ釣りは楽しくなります。とくに私が愛用している『タイコリール』は収集心を揺さぶります。ルアーと同じように集めて眺めたくなるギアで収集が止められません(^O^) 見ているだけでウイスキーボトル半分いけます」
(笑)。さすがですね。
「いやぁ、僕なんでまだまだすf^^*) 下手なんですよ……。それにおっちょこちょいで、よく忘れ物をします。竿を持たずに釣り場に行ったり、エサを忘れたり、ハリやオモリ等の小物一式を忘れたり……。一番ひどかったのは関西に初遠征するとき、うれしすぎて1週間前から念入りに準備をしていたのですが、クロダイ釣りには欠かせないタモ一式を忘れしまいました。玄関に……でした」
……。アルアルです。
「ただ、そんな僕でも、愛知県在住の美容師のなかでクロダイの落とし込みということであれば、上位には入ると思います」
ずいぶん、限定しましたね(笑)
クロダイの落とし込み釣りは三つの釣り方がある
ところで、俺は海釣りに関しては、まったくの初心者です。今、落とし込みという言葉がありましたが、それがどういうものかもわかりません。そもそもクロダイにはどのような釣りがあるのでしょうか。
「まず、釣りは地域によって考え方が違う場合もあるし、いろいろな説があります。なので、これからのお話は、『僕が知るかぎりの知識としては』という注釈がつきます。それで、クロダイの釣り方についてですが、僕が住んでいる中京エリアではフカセ釣りで狙うのが多数派です。フカセ釣りとは、仕掛けにウキを使用しないで、エサやハリ、糸の重さだけで仕掛けを海中にフカせて(漂わせて)、魚を誘う釣り方です。ただ、ウキがないと、かなり高度な釣りになるので、今では中通しウキを使う釣りをフカセ釣りと呼ぶのが一般的です。クロダイ釣りには、他にも筏釣りや紀州釣りなどありますが、それらに共通しているのは、集魚剤(撒きエサ)を使ってクロダイを寄せて釣るということです」
なるほど。「海は広いな♪ 大きいな♪」ですが、集魚剤の匂いなどでクロダイが寄ってくるのですね。
「その集魚力によって水温の低い冬でも釣ることができるのです。ただ、私が思うフカセ釣りの難点は荷物が多くなることです」
すると落とし込み釣りは……。
「はい。荷物は少なめです。落とし込み釣りは手にロッド、腰にタモ、ベルトに小物を装着し、荷物なしでどんどん移動してクロダイを探しながら釣る方法です」
おもしろそうです。俺が好きな渓流釣りの沢歩きに似ているかもしれません。クロダイを狙うなら落とし込みがよさそう……。
「ぜひ。ただ、一口に落とし込みといっても、大きくわけて3つの釣法があります。『ヘチ釣り』『目印仕掛け』『前打ち』です」
う~、ちょっと複雑……。
「まぁまぁ。一応、まずはこういう釣りがあるという基礎を学ぶということで。説明すると、ヘチ釣りのヘチとは堤壁のことで、ヘチ釣りは堤防から近場を攻める釣りです。竿は3m未満の短いものを使い、リールはドラグがないヘチリールを使用します。また、目印仕掛けはヘチ釣りに似ていますが、文字どおり目印を使うところに違いがあります。その目印は道糸とハリスの中間につけます。ラインに目印が通してあるものが目印仕掛けとして市販されていますが、目印付きの仕掛けは自作することもできます」
もう一つの前打ちは、どういう釣りですか?
「前打ちは少し長めの竿を使うのが特徴で、目安としては5m以上です。竿下からその前を狙う釣りで、遠浅なフィールドに向いています」
これからやってみたいという俺はどの釣り方がよいのでしょうか?
「管理人さんは関東の方でしたっけ?」
海がない埼玉県民です(笑)。
「千葉あたりに出向いてください(笑)。でしたら、ヘチ釣りがよいかもしれないですね」
住んでいるところが関係するのですか?
「はい。クロダイの落とし込み釣りは、各地方によって、そのエリアならではの釣り方が楽しまれてきたという歴史があり、関東エリア、中京エリア、関西エリアが三大エリアとして有名です。それで、関東エリアでメインとなっているのがヘチ釣りなのです。関東では堤防から海面までの距離が短いので、短めの竿を使うヘチ釣りが向いているのです」
クニさんは愛知県在住ですが、どの落とし込み釣りをやっているのですか?
「まず愛知県を含む中京エリアで、はずせないのは目印仕掛けです。なにせ中京エリアは目印仕掛けの発祥の地ともいわれていますから。これは高い堤防からアタリを取るために考案されたようです。でも、中京エリアは、それだけではなく『前打ち』も盛んですね。そして僕はというと、欲張りなのでヘチ釣りを含めて、すべての落とし込み釣りをやります」
ちなみに関西エリアはどうなっているのでしょうか?
「すごいことになっています(^o^)ソイヤッ 関西は非常に釣り場が豊富で、放流のおかげか、クロダイの絶対数も断然に多い。釣り方も釣り場に応じていろいろできるので、関西エリアは落とし込みのすべての釣法が浸透しています」
クロダイの釣り方
★ルアー釣り/クロダイは雑食性でルアーで釣ることもできる。ルアーでクロダイを釣る釣りは「チニング」と呼ばれている。
★エサ釣り/古くから楽しまれてきた釣り方。いくつかの種類がある。
●フカセ釣り/もともとは仕掛けにウキを使用しないで、エサやハリ、糸の重さだけで仕掛けを海中にフカせて(漂わせて)魚を誘う釣り方であった。現在では中通しウキを使うのが一般的。
●落とし込み/フカセ釣りは撒きエサを使ってクロダイを寄せるのに対して、この落とし込みは釣り人が移動してクロダイを狙う。「ヘチ釣り」「目印仕掛け」「前打ち」という代表的な三つの釣り方がある。
・ヘチ釣り/3m未満の竿&ドラグがないヘチリールを使うのが一般的。堤防から足元を含む近場のクロダイを狙う。
・目印仕掛け/3.5~4mの竿&ドラグ付きのリールを使うのが一般的。竿のガイドは輪ではなく、U字型のものが多い。ヘチ釣りと同様に堤防から足元を含む近場のクロダイを狙う。足場から海面までの距離が遠いフィールド用のためにヘチ釣りから派生したと考えられている。
・前打ち/5m以上の竿&ドラグ付きのリールを使うのが一般的。目印仕掛けと同様に竿のガイドは輪ではなく、U字型のものが多い。竿下よりも前を狙う釣り方。
*ドラグ=魚の強い引きに対してスプール(リールの糸が巻いてある部分)を逆転させてライン(糸)を送り出す機能のこと。
執筆者のプロフィール
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