【プロのリール修理士が教える】釣行後には流水で水洗いを【リールのメンテの基本】

グリスとオイルはリーズナブルなものでもOK
 ピカさんは俺には未知の世界を生きていて、お話が本当におもしろいです。ここでさらにアングラーに役に立つ情報をお伺いしたいのですが、普段のメンテナンスはどのように考えればよいのでしょうか?
「先ほど『リールの一番の敵はサビ』とお伝えしましたが、たとえサビなくても、塩分が結晶化して動きを悪くすることがあります。そこで、とくに海釣りの場合は釣行後の水洗いが重要です流水でよく洗うことをおすすめします。もし、水没してしまったら、すぐにバケツなどに水道水を張って、リールを浸けてください。いくらかでも塩分が薄まります。そして、その後に水を切ってメンテナンスを行うのが理想です。なお、淡水の場合は、海水にくらべると、そこまで神経質になる必要はありません。」
 グリスを塗るのも一般的なメンテナンスだと思いますが……。
「そうですね。グリスは重要です。それとオイルも。よく『グリスとオイルはどうやって使いわけるの?』と聞かれるのですが、グリスは主に可動部とギア、オイルはベアリングや軸受けなどの回転部分に使用します。使用するグリスとオイルはメーカーの純正品がありますが、ちょっとお高いですよね。よほどの粗悪品でなければ、ホームセンターで売っているリーズナブルなものでも十分です。ただ、品質のよさは価格の高さに比例するのは事実なので、プロやこだわりの強い方は純正品もしくは高価なものを使用したほうがよいとは思います」

場合によっては、リール内部のグリスが固着することもあるそう。この写真はアブ・ガルシアのアンバサダー7000Cの修理時の一コマです。

 その考え方はどの世界でも同じですね。
「そう思います。ただ、リールのメンテナンスについては、グリスやオイルの品質もさることながら、何よりきちんと定期的なメンテナンスを行うことが重要です
 なるほど。メンテナンスについては、もしかしたらバイクのパーツクリナーも使えるかも……。
「私はバイクのメンテナンス用アイテムのことはわかりませんが、クレ556に代表されるシリコン系潤滑剤はNGなので注意が必要ですとくにベアリングには絶対に使わないようにしてください。最初はよく回りますが、使用回数が増えるにしたがって回転が悪くなります。そして、徐々にカスが溜まって最終的には固着してしまいます」
 ハッ! 使うところでした……。
「気をつけてください。なにせ、リールの寿命はメンテナンス次第でかわりますから。一口に水洗いといっても、流水でていねいに洗う人がいれば、ロッドに付けたままでホースで水を掛けるだけの人もいます。どちらも水洗いには違いないですが、質がまったく異なります。もちろん、前者のほうがリールは長持ちします」
 メンテナンスが大切なのはわかっているのですが、釣行日は疲れてしまい、どうしても後日になってしまうのですよね……。
「それはよくないですね。釣りにいったら、できるだけ、その日のうちにお手入れをしましょう。それがメンテナンスに掛かる費用を左右します。基本のオーバーホールだけですむか、パーツをごっそり交換する羽目になるかはお手入れ次第です。オーバーホールの3,000円ですむところが、パーツを多数交換して9,000円なんてことも……。それだけならまだしも、日ごろのメンテナンスを怠ったがために、釣りの最中にトラブってしまい、楽しみにしていた釣り自体が中止になるなんてこともありますからね」
 日ごろのメンテナンス、意識します。でも、みんながそうすると、ピカさんの仕事が減ってしまいますね……。
「確かに(笑)。仕事がなくなったら、また別の仕事を考えます。もちろん釣り関係で……。いずれにせよ、リールの異常を感じたらなるべく早めにメンテナンスを行うことをおすすめします。生きものには自然治癒する力がありますが、機械にはありませんからね。そのまま使い続けてよくなることはありません。ここで私の仕事をアピールさせていただくと、定期的にメンテナンスに出すと、より長くリールを使えます」
 ちなみにピカさんにとってリール修理業とは何でしょうか?
「生業です(笑)。お金を得る手段と言うよりは、生きていく手段です。同じ意味のように思うかも知れませんが、私は前者より後者のほうがシビアであると考えています。ですから手を抜けません」
 うち(『釣りとバイクが趣味なんだ。』)には学生もいるので、若者に仕事選びのアドバイスもお願いします。
「私は今の仕事に出会うまでに10回以上転職をしました。日本では1つの仕事を一生続けることが美徳として考えられている傾向がありますが、無理と思ったら早めに見切りを付けて次を探すことも大切です。無理な仕事を続けると、身体や精神が蝕まれたりします。そうなってからでは遅い。1つしかない自分の身体は自分で守るしかありません」
 俺も同じ出版界のなかとはいえ、転職は結構しました。よい悪いではなく、自分に合う、合わないという感覚も大切ですよね。
「そう思います。とはいえ、安易に転職を繰り返すのではなく、どんな仕事でも何かを得てから辞めたほうがよいとは思います。例えば運悪くブラック企業に入社してしまったら、『この手の仕事はヤバイ』ということを得られたことになりますね(笑)。もちろん、悪いことばかりでなく、技術や知識もしっかり習得することが大切。意外なことが後に役立ったりします」
 ん~、この記事、ぜひ、若者にも読んでほしいものです。

シマノの16ヴァンキッシュC3000Sのオーバーホールの様子。ピカさんのブログはだいたい「
ギュイ~~ン!!」で終わります。

【達人のプロフィール】

ピカレスク
フリーランスのリール修理屋。名前の由来はピカレスク小説(悪漢小説)という悪者が活躍する小説から。
「ピカレスクは拡大解釈をすると悪者や悪人が主人公の小説やアニメ作品も含まれます。殺し屋のゴルゴ13や泥棒のルパンⅢ世、ワンピースなんかも海賊ですね。そういう、清く、正しく、美しくない主人公が好きなんです。
世の中キレイごとだけじゃあつまらない。しかし、仕事はパーフェクト。そんな所から名付けました」。リールの修理については他所でやらない類の修理も行う。リールの持ち込みや発送は大阪府泉佐野市まで。具体的な住所や日々の仕事についてはこちらをご参照ください。最近、食べて美味しかったものはとん平焼き(大阪など関西地方ではおなじみの鉄板焼きメニューで、炒めた豚肉と野菜などの具を卵で包むというのが一般的)。最近、自分の釣りのために購入したタックルは中古釣具屋で見つけた古いスピニングリール。お値段は216円。
※ピカレスク様のイラストはご本人の提供で、絵師の「ようせい999」さんの作品です。

(バックナンバー)
【釣り編】
其の一 まりっぺさんの巻 デカバスを狙うなら琵琶湖でワーム!
其の二 かなすびさんの巻 大注目のタチウオテンヤ釣り
其の三 Fresh Kitchen・戸田美保子さんの巻 料理のプロが教える美味しい魚料理

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