バイク編 その27 和嶋慎治さんの巻
今回のナビゲーターは、ちょっと驚く人も多いと思います。
この御方はバイクのソロキャンプをこよなく愛していて、それを知った管理人が、いわばダメもとでお願いしたところ、まさかのご快諾をいただいたのでした。
このような日がくるとは……(感激です)。
今回はメールでの取材でした。俺はときにそこから本職の編集者魂で対面取材風にアレンジすることもあるのですが、あまりにご回答いただいた日本語が美しいので、ほぼ、ストレートにお届けします。
さすがの作詞家、さすがの雑誌のコラム執筆家です。
それでは、いきます。
世界が認める日本製ハードロックの雄・人間椅子のVo&Gの和嶋慎治さんのご登場です(パチパチパチ)!
テーマは「バイクで行けるキャンプ場ベスト5」です!!
質問作成/管理人 本文/用字用語の統一や改行等、一部編集しましたが基本的には和嶋さんの原文ママです。写真は許可を得て和嶋さんのYouTubeチャンネルにて公開されている動画をキャプチャしました。無断転載は禁止とさせていただきます。
雪の東北はチェーンをつけてもツルツルだった…
~和嶋さんが語るバイクの魅力と思い出~
●バイクのソロキャンプの魅力
わいわい大人数でやるキャンプも楽しいのですが、自分としてはキャンプの醍醐味はソロにあると思っています。他人に気を遣うこともなく、ふらりと思い立った時に日常を離れられる。人間にとって自分と対話する時間というのは、とても必要だと思うのですが、自宅にいるとあまりにたくさんの情報と所有物に囲まれて、なかなかそれが難しい。
ソロキャンプに出掛けますと必要最低限のものしかありませんから、存分に自分と対話できます。そうすると、「実は自分は誰の持ち物でもない自由な存在である」など、様々なことに気づかされます。
その際、キャンプ場への移動手段は何かという話ですが、もちろん電車、バスだってOKです。悪天候ならば自家用車もよし。ですが、よりソロキャンプを純粋に味わいたいならば、バイクが断然おすすめです。基本的にバイクは一人乗りですし、雨、風、日差し、自然の洗礼を直に肌で感じられる、稀有な乗り物だからです。
●これまでの単車人生における印象的なエピソード
大学生の頃です。それまで3年ほど乗っていたカワサキZ250FTを盗まれ、代わりに友人からスーパーカブ50を譲り受けました。そのカブでは二度ほど東京から、実家のある青森県弘前市まで帰省しました。一度目はお盆の時期。八幡平手前の岩手のダラダラ坂でバルブが溶け、慌てて入ったバイク屋でからくも修理。カブの高い部品汎用性に感心しました。
懲りずに二度目は年末。タイヤチェーンを携行し、完全武装で真冬の東北に挑戦です。仙台のガソリンスタンドで、どこに行くんだと聞かれ「青森」と答えた途端、「やめとけ」「やめろ」と何人ものタクシー運転手に取り囲まれ、しょうがないので「やめます」と嘘をついて、しばらく道を引き返しました。
雪の降り積もる岩手に入ってからは、ほぼ寒中修行。チェーンをつけていてもツルツル滑り、何度も転び、時速も20キロより上は出せません。誰もいない小坂峠の山中で、凍えながら年を越しました。あの地獄は2度と味わいたくないと、バイクは下宿に陸送、僕自身は鉄道で東京に戻ったことです…。
第1位は「何もないから素晴らしい」という、あのキャンプ場…
~和嶋さんのおすすめバイクで行けるキャンプ場ベスト5
さて、ここからが今回のテーマのキャンプ場の紹介です。
まず惜しくもベスト5を逃した次点から。
次点
和島オートキャンプ場(新潟県長岡市)
ファミリー向けの、清潔で設備の整ったキャンプ場。野趣満載とはいかないものの、僕の先祖が能登半島出身ということもあって、他人の土地とは思えません。
※和島オートキャンプ場はこちら↓
さぁ、いよいよベスト5です。
第5位
谷瀬つり橋オートキャンプ場(奈良県吉野郡十津川村)
紀伊半島には古い日本があります。だいたいどこのキャンプ場も、コンビニは数10キロ先というのが素晴らしい。実はここでは恐怖体験をしたのですが…また泊まってみたい…。
※谷瀬つり橋オートキャンプ場はこちら↓
第4位
オレンジ村オートキャンプ場(千葉県南房総市)
南房総のあたりは冬場でもキャンプできるので重宝します。人気スポットゆえ、一人ぼっち状態にはなれませんが、段々畑に立地しているので、夜には幻想的な光景が広がります。
※オレンジ村オートキャンプ場はこちら↓
第3位
ネイチャーランドオム(山梨県南都留郡道志村)
道志では道志の森キャンプ場が有名ですが、ここはわりと穴場。バイク乗り入れ可なので、静けさの中、バイクを眺めながら酒が飲めます。
※ネイチャーランドオムはこちら↓
第2位
一の瀬高原キャンプ場(山梨県甲州市)
奥多摩方面にキャンプ場はいっぱいありますが、野趣を求めるならこちら。不便さこそが贅沢なんだと、ソロキャンプの醍醐味を味わえることでしょう。
※一の瀬高原キャンプ場はこちら↓
第1位
祓川(はらいがわ)キャンプ場(秋田県由利本荘市)
鳥海山五合目登山道入口にあるキャンプ場。何もないのが素晴らしい。絶景で、鳥海山を独り占めした気分になれます。
※祓川キャンプ場はこちら↓
気持ちよく風を切りながら神を感じている
~和嶋さんに訊く7つの質問&読者の皆さまへ~
第1位は秋田県の祓川キャンプ場でした。何もないのが素晴らしい……。かなり気になります。
そして、まだまだ、質問とご回答は続きます。
管理人が人間椅子を、そして和嶋さんをあまりに好きすぎて、「もし、よければ……」ということで音楽のことも含めて質問を記したところ、すべてにお答えいただきました。
Q.愛車のスズキ・GT380の魅力
空冷2ストローク3気筒という、今や絶滅したエンジン形式、そしてそれによる野蛮かつ官能的なサウンド。全体的に醸し出す70年代感、昭和感。自分にとってそれは、単なるノスタルジーというより、夢の中から出てきたマシーンなのです。
Q.GT380の青を選んだ理由
一般的にはあまり人気のない青色ですが、僕には70年代っぽくて、とてもカッコよく見えたのです。一目惚れです。つまり、この色を乗れるのは僕しかいない、僕に乗られるのを待っていたんだと思ってしまったのです。
Q.GT380で、これから手を入れたいところ
サイドスタンドが逆車ゆえか寝すぎているので、もう少し立たせたい(GT550の、おそらく国内物のサイドスタンドをすでに入手済み)。
僕のサンパチは初期型なので、スズキお得意のギアポジションインジケーターがついていません。当時物で揃えるのもアリですが、ここはあえて、インジケーター側は自作で、スイッチ側はGN・GSX等の流用で取りつけたく思っています。
Q.他のライダーがバイクキャンプを行うときに注意したい点
まず積載でしょうか。あれもこれもと持って行きたくなりますが、そうするとせっかくのバイクの機敏さが失われてしまいます。荷物は必要最小限をお勧めします。そして無理をしないこと、飛ばし過ぎないこと、距離を稼ごうとしないこと。メンタル面でも車重の面でも、普段とは違っていることを念頭に。
Q.「これからバイクキャンプをしたい」という人がテント・シュラフ以外で用意したほうがよいもの
雨具は必須。簡単な工具に、応急パンク修理キット。山の夜は冷えるので、かさばらない程度に肌着など。簡易コンロは必携ですが、椅子、テーブルなどの贅沢品はなくても何とかなります。ただし、長い夜に備えて焚き火台は必ず持ちましょう!
<音楽活動について>
Q.ロックのアーティストであり続けている原動力
表現者というのは、生活に必要なものを生産するわけではないですから、畢竟、社会の根幹をなす役割などではなく、限りなくトリックスター、アウトサイダーに近い存在だと思っています。ただしまた、人がパンのみで生きられないように、人が人であるために芸術がなくなることもないでしょう。ロックは芸術の末席ですが、大衆化の変形として、よりトリックスター的役割があるのではないかなと僕は捉えています。
その原動力のようなものがあるとしたら──周縁者であることの矜持、一般論に迎合しないこと、でしょうか(もちろん僕とても社会で生活しているわけですから、心の奥底で、の話です)。
常に透徹した視点を持ち続けられることが理想です。
そして第一義は表現することであって、そのことによって生ずる報酬、名声は、あくまで副次的なものです。それが逆転し出した時から、おそらく作品は輝きを失い、曇り出します。
純粋でありたいですね。
※管理人注/畢竟はひっきょうと読み、「結局」という意味です
Q.これまでの人間椅子の活動のなかで、もっとも印象深い楽曲
アルバム『新青年』収録の、「無情のスキャット」。報われないと思っている人たちに向けて、自分の実体験を重ねて書いた曲です。想像だにしなかった海外からの高い反応を得て、何か今までの苦労が報われた気がしています。
管理人としては「無情のスキャット」は少し意外でした。でも、考えてみると確かに。
2019年発表の本楽曲はYouTubeで563万回(!)再生され(2020年6月現在)、2020年2月には結成30年を超えて初の海外ワンマンツアーがドイツとイギリスで行われたのです。
「無情のスキャット」についてはYouTubeを埋め込んでおきます。未聴の方はぜひ聴いてみてください。
そして、最後に読者へのメッセージです。
これはバイクを愛する皆さまに、ぜひ、読んでいただきたい名文だと管理人は思います。
●バイクを愛する皆さまに
バイクにご興味のある方、あるいは実際に乗られていている方が、これを見ているのだと思います。
誇張ではなく、僕はこの世にバイクほど素晴らしいものはない、この世界に、バイクほどカッコよくて、面白いものは存在しないと思っています。特段の才能も必要なく(プロライダーは別)、ちょっとの修練で、手にした瞬間から誰でもが、非日常的世界を垣間見ることができるのです。あの感覚──空を飛ぶ夢を見たことがある方も大勢いるかと思います。あのバイクを操る感覚は、とても空を飛ぶ夢に近いものではないでしょうか。
ここで話を少し大げさにしますが、神秘体験、宗教的体験というものがあります。誤解を恐れずにいえば、宗教的体験とは、まず主観的なものであり(だからこそ個人の人格が変容する)、少人数、大人数、どのような状況で起ころうと、図式はあくまで個対神なのです。
さて、バイクは主観的な乗り物です。僕は一人、山の中などを走っていると、そこに神の息吹を感じます。個が際立つから、神を感じやすくなるとでもいいましょうか。変なことをいっていると思われるかもしれませんが、それに近いことは皆さん感じているのではないでしょうか。
だから…自分の趣味に合わないバイク乗りがいたとしても、けっして否定したりなどしないでください。排気量マウントはやめましょう(僕だって中型乗りです)。クルーザーだから、SSだから、車種の縄張り意識はやめましょう。どうせオレは安いバイクだから、ボクのバイクってとっても高価、バイクの値段査定で人間を判断するのはやめましょう。あの珍な改造はないなー、うわっあいつノーマルでダセェー、バイクの外観差別はやめましょう。
みんな思い思いに、それぞれのやり方で、気持ちよく風を切りながら、神を感じているのですから。
よきバイクライフを。
【趣味人のプロフィール】
和嶋慎治
バンド『人間椅子』のVocal&Guitar。趣味ではバイクとソロキャンプをこよなく愛す。ヘヴィメタルを中心とした音楽カルチャー誌『ヘドバン』(シンコーミュージック・エンタテイメント)にて、コラム『孤独が道連れ 野営一人旅』を連載中。YouTubeチャンネル『哀愁のワジマシーン』も好評を博している。
人間椅子は1989年にTBSテレビ系列の『平成名物TVイカすバンド天国』に出演し、独創的な世界観と圧倒的な演奏力で評判を呼んだロックバンド。1990年7月にメルダックより『人間失格』でメジャーデビューを果たし、以来、四半世紀以上に渡って活動を続けている。国内のみならず、海外での評価も高い。
【人間椅子/NINGEN ISU】
HP:http://ningen-isu.com/
twitter:https://twitter.com/ningenisu_staff
facebook:https://www.facebook.com/ninngennisu
instagram:https://www.instagram.com/ningen_isu/
【和嶋さんの愛車】
スズキ・GN125H(輸入車)
スズキ・ボルティー(GN250風にカスタム)
スズキ・GT380(B2 逆輸入車)
ちなみに車はスズキ・アルトバン(5MT HA36V)
【和嶋さんのバイクとの付き合い】
「そもそも乗り物が好きで、細々とではありますがバイクにはずっと乗っていました。2016年ごろにもう一度ミッション付きのバイクに乗りたいと思い立って125CCのバイクを買ったんです。そしたら、とても面白くて、以来ずっとバイクにハマっています」
※https://www.diskgarage.com/digaonline/pleasure/117490より抜粋
【最近食べた美味しいもの】
「富津新名物の、カジメ(昆布の一種)。もともと年を取ったせいかワカメなどの海藻類が好きになっていたところに、カジメの存在を知り、即購入。味噌汁にたっぷり入れて食してみると、美味いのなんの」
【最近購入したバイク関連グッズ】
「ノーマルのサンパチをチェーン引きする際、左側のマフラーが干渉して、普通のトルクレンチだと使えません。何かいいものがないかなと物色したところ、あるんですね、モンキのトルクレンチが。TONE モンキ形トルクレンチ TMWM60 10~27mm 15~60N・m。店頭にはなかなかないので、アマゾンで買いました。これで狭い隙間のトルク管理も安心です」
【趣味人に聞く/バイク編のバックナンバー】
その1 肉山☆のりこさんの巻 リーズナブルなバイク満喫術
その2 ペペモーターサイクルス・鳥山さんの巻 プロのメカが教えるメンテナンスのコツ
その3 タカハシミツルさんの巻 バイクの楽しみ&旧車の魅力
その4 小川みずきさんの巻 入門者におすすめのバイク取り回し術
その5 シロクマさんの巻 リターンライダーがすすめる最新バイクギア
その6 野上鉄夫さんの巻 パーソナルトレーナーが教えるバイク乗りのための腰痛対策
その7 平塚さんの巻 自分のバイクで海外ツーリング
その8 マヨさんの巻 若い世代がバイクを選んだ理由
その9 コバンさんの巻 トコトコ カブ旅の魅力
その10 michikoさんの巻 ドゥカティ乗りがバイクを降りられない理由
その11 ピカレスクさんの巻 バイク釣行のポイント
その12 kanai factoryさんの巻 バイクで行く、おすすめB級グルメのお店
その13 あおさんの巻 全国版おすすめの感動ロード・ベスト5
その14 肉山☆のりこさんの巻 バイクで行く激熱&格安温泉ベスト3
その15 ワヤエンカウントさんの巻 都道府県別おすすめツーリングスポット【岡山県編】
その16 Mi-RIDERさんの巻 人気モトブロガーがすすめる最高ツーリングロード・ベスト5
その17 山ちゃんさんの巻 都道府県別おすすめツーリングポイント【茨城県編】
その18 @ともさんの巻 人気アメブロガーおすすめの「くねくね道」ベスト5
その19 せんちゃんの巻 都道府県別おすすめツーリングポイント【静岡県編】
その20 ぴなこさんの巻 都道府県別おすすめツーリングポイント【埼玉県編】
その21 はちよさんの巻 おすすめバイクツーリングアイテム・ベスト5
その22 寺崎愛さんの巻 ジムカーナの魅力・ベスト3
その23 ダイスケさんの巻 女性にバイクに興味を持ってもらう方法ベスト5
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その25 よしさん(オートバイのある生活)の巻 バイクの人気サイトのおすすめ記事ベスト5
その26 SpriteRiderさんの巻 都道府県別おすすめツーリングポイント【宮城県編】
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