新年、明けましておめでとうございます。
本サイトの釣り編のお正月の特別企画といえば、プロのリール修理師・ピカレスクさんのご登場です。
今年で3回目になりますかね。
今回は特にお願いしたいテーマがあり、それはリールの進化です。
いや、最近、メットを新調したのですが、インナーバイザーとか、メット内のインカム用のスペースとか、いろいろいろと進化していることに少し驚いたのです。それでリールはどうだろう……と思った次第です。
お願いしたところ、ご快諾いただき、とてもおもしろい原稿をいただきました。
そこで、今回は、ほぼ原文ママで掲載させていただきます(一部、本サイトの編集方針に基づいて用字用語の統一など、調整させていただきました)。
人生を豊かにするのは知識です。
リールの歴史をコンパクトにまとめていただき、もう釣り人なら必読といえる内容でしょう。
目次
春先にカワムツのルアー&フライフィッシング~2022年の振り返り~
まずは管理人さんのご要望で2022年の振り返りから。
1~2月は真冬のバスのフライフィッシング。ルアーでも厳しい時期ですが、何とかボウズにならない程度に釣れました。フライを沈めるということだけでもルアーの何倍も面倒です。フライはもちろんのこと、ライン自体も沈むモノを使用しなければなりませんでした。まして、陸っパリでやっていたので、ロッドを振れる場所を確保して、それからようやく釣りになります。バスをフライで狙っている人自体少ないのに、真冬にしかも陸からバス釣りなんてやっている人はほとんどいない。
世の中、コレだけいろいろな情報が溢れていても、真冬のバスのフライフィッシングは調べてもほとんど出てきません。
ただ、試行錯誤する楽しさは味わえました(笑)。
春先からは渓流釣りを開始しました。マス釣りは普通に誰でもやっているのでカワムツのルアー&フライフィッシング。カワムツは私の家からすぐ近くの河川に生息しているので気軽に狙えます。小さいと10㎝くらいですが大きい物は20㎝くらいあるので、なかなか楽しめます。
夏場はルアーとフライでバスフィッシング。近所に釣り場が多いので仕事の前後、数日に1回は行く感じです。
秋。10月中旬に一人旅。東北弾丸ツアーを行いました。
10月18日のことです。
正午、大阪府泉佐野市の自宅を出発! ひたすら北上。
17時頃、静岡県の富士で高速道路を降りて給油と休憩。
18時頃東京都内を通過。
20時過ぎに茨城県日立で高速を降りて給油と夕食
24時福島県南相馬市のインターで休憩宮城県大崎市で自宅から1000キロ。
19日の5時過ぎに青森県の東北道終点。
8時に本州最北端大間崎着。
走行距離1497キロ。約20時間で到着。残念ながらバイクじゃなくて軽四の箱バンですけど。ソコから東北各地で釣りをしながら帰ってきました。
11月に入るとカワハギのシーズンです。友人の所有する船で釣らせてもらいます。午前中で20匹くらい。小さいのはすべてリリースして25cm以上だけキープします。
こんな感じで相変わらず釣り人の1年でした。
振動を軽減したのは1991年のシマノのステラ~スピニングリールの歴史~
職業上、リールの歴史に興味があり、いろいろと調べる事も多いです。ただ、ソレをすべて語るとドン引きされるくらいの量になるので、今回はスピニングリールとベイトリールの2機種に割り切り、しかもできるだけコンパクトにまとめます。
スピニングリールの歴史は戦前のヨーロッパです。
なかでもイギリスのハーディ・アルテックス、フランスのミッチェル300型、スウェーデンのABUカージナルは三大傑作スピニングリールと呼ばれています。
それから現在まで各国で無数のスピニングリールが生み出されてきました。
80年代までは奇抜な物や独自の機構を持った変異種も少なくなかったです。
スピニングリールの大きな転換期はやはりインスプールタイプからアウトスプールタイプ(スカーテッドスプール)への移行といえるでしょう。
スピニングリールは構造上、インスプールタイプのほうが軽くできるため、70年代後半まではインスプールタイプが主流でした。
インスプールタイプの欠点はスプールの下にラインを巻き込みやすいこと、それからベイルをマニュアルで戻せないこと。ただ、この問題については一部にマニュアルリターンのモデルも存在しました。
そのうちにアウトスプールタイプでも軽量化が進み、80年代中ごろまでにインスプールタイプはほとんど姿を消してしまいます。
次にドラグの変化。
ABUカージナルに代表されるリアドラグ化でした。リールのお尻でドラグ調整ができるため、ラインの通っているスプール上部に手を伸ばさずに済みました。ただし、コレは一部機種を除いて短い流行に終わりました。
構造上、どうしてもドラグワッシャーの面積が小さく、強いドラグを作れない。それからドラグワッシャーがボディ内部にあるため、メンテナンス性が極めて悪い。
そして80年代中盤になって、現在の物と近い形状のリールが登場します。ダイワが発売したウイスカートーナメントSSシリーズです。
浅溝ロングスプールと驚くほど小さく軽くなったボディ。スプールはそれまでの物と比べて幅は広く浅くなり、飛距離が劇的に向上しました。
唯一の欠点は振動が大きいこと
頭でっかちになったため、どうしてもバランスを取るのが難しかったようです。
その振動をほとんどなくしてしまったのが1991年に発売されたシマノのステラシリーズ。
SBL(シマノバランスロック)と呼ばれる構造はほとんど振動がなくスムーズな巻き感。
「ホントにギア同士が噛み合っているのか?」と思うような優れものでした。
このときのステラが現代のスピニングリールの礎となっているといっても過言じゃないです。
それから30年以上が経過しました。
各社のスピニングリールの巻き感や軽量化はもはや最高潮に到達していると思います。
価格も最高ですケド(笑)。
今後の進化に関して各社がどのような事を考えているのか?
さらなる高速化? 軽量化? 防水性能?
私は耐久性を上げて欲しいと思ってます。
「巻き感の良い期間が長続きしない」
これが問題で、昔のリールって使い込むほどに滑らかになる物が多かったンです。
最初の1年は慣らし運転みたいな物で、そこから使い込み、整備していくうちにドンドン滑らかになりました。
今のリールは使うほどにガタガタになっていきます。
ボディやギアの問題だと思いますが、そういう物は作れないんでしょうか?
そりゃまあ、定期的に買い換えてもらわなければメーカーは儲からないデス。
それでもあまりにもよい期間が短すぎないですかネ?
斬新なブレーキシステムのダイワのマグサーボは1982年に登場~ベイトリールの歴史~
ベイトリールが発明されたのはスピニングリールと同じヨーロッパと聞いたことがあります。
ただ、ソレが海を渡り、アメリカで進化を遂げました。
100年以上前にケンタッキーリールと呼ばれる両軸リールが発明され、そこからダイレクトリールが生まれ、フリースプールタイプに繋がっていきます。
戦前までのベイトリールはダイレクトリールでした。
初期の物はレベルワインドがなく、ラインを指で左右に振って巻き取っていました。
レベルワインドの登場がベイトリールの歴史を変えるのですが、実際いつ頃何処が作ったのか?
イマイチ判りません。
ただ、戦前にはすでに装着されていたようです。
次にフリースプール。
ダイレクトリールはキャスト時にスプールと一緒にハンドルも回転していました。
やはりスプールだけ回転するほうがよく回るし、高速回転しているハンドルをどこかにぶつけないとも限らない。
わりと早い段階から各社フリースプールの研究を重ねていました。
初期はハンドルを外側に引っ張って切り離すモノが出てきましたが、コレはハンドルが離れるだけで、スプールとギアは一緒に回っていました。
ギアをスプールから切り離すクラッチ式も各社からいろいろなアイデアの物が発売されましたが、どれも完成度がイマイチでした。
そして1952年、革命的なクラッチシステムを持ったベイトリールが発売されました。
スウェーデンのABU社がリリースしたレコード(アンバサダー)No5000です。
このときのクラッチ構造はいまだにアブガルシアのリールに採用されています。ちなみにそれはクラッシックシリーズで、日本のD社などは一時期この構造をまるパクりしていました(笑)。
要はそれくらい完成度の高いクラッチということ。
このときのクラッチがなければ今のリールのクラッチはまた別の物になっていたハズです。
それから1970年代後半になって丸形一辺倒だったベイトリールにデザイン革命が起きます。
非円形ボディを持つシマノのBMシリーズです。
クラッチこそはアンバサダーに似通っていましたが、丸形よりもローダウンされたボディはパーミングしやすく、当時のグリップにまで影響を与えたといいます。
続いてシマノのバンタムとダイワのファントムが登場。小型、軽量、ロープロボディということで日本でもアメリカでも大流行します。
また、双方とも独自のクラッチ機構を持つようになります。
とはいえ、まだこの頃のベイトリールはアンバサダーが揺ぎない地位を確保していました。
しかし、徐々に日本製ベイトリールがアンバサダーを追い詰めていくことになります。
1982年、ついにマグネットブレーキのベイトリール、ダイワのマグサーボが登場します。
それまで主流だった遠心ブレーキと違い、軽量物でもバックラッシュせさせずに思いっきりキャストできました。
ただ、初期の頃はブレーキ自体が強すぎて、バックラッシュなしでキャストをできるけれど飛びはイマイチでした。
ここでまた余談ですが、マグネットブレーキのベイトリールはもっと前からありました。
詳しい年代は不明ですが、マグネットブレーキを搭載したダイレクトリールが存在します。
ブリストルのエレクトロマチックというリールです。
気になる方は自分でお調べを。
このままベイトリールはマグネットブレーキが主流になっていくのかと思っていたら、シマノが久々に遠心ブレーキのベイトリールを登場させます。
スコーピオン1000と2000です。
このリール、めちゃくちゃ回転が良かったのですが、ブレーキの効きがイマイチで、バックラッシュは多かった(;'∀')
そして1991年、これまたシマノが久しぶりに丸形のベイトリール、カルカッタを発表します。
カルカッタも遠心ブレーキでしたが、スコーピオンよりはマイルドで使いやすかった。
しかし、翌年、ブレーキブロックが6個も付いたSVSシステムが登場。ココに来てカルカッタは完成の域に入ります。
カルカッタの登場を受けて、当時のABU代理店(エビスフィッシング)の社員だった方は、「初めてアンバサダーが負けたと思った」とコメントしています。
このときの内部構造は現行のオシアカルカッタに引き継がれています。
それ以降、各社、小型化、軽量化、高回転化で鎬を削ります
自重が200gを切るようになり、3gのルアーもキャスト可能、バックラッシュもほとんどしない。
しかし、どうしても超えられない壁が存在しました。
それはギアの高速化です。
80年代にダイワのPT33SHが1:7.1というのを最後にギアの高速化が止まっていました。
この時の1:7.1というギアレシオですが、ハンドルを回すと異常に重くて、抵抗の大きなルアーには使えない。
さらにギアの高速化にはメインギアの径を大きくしなければならないため、大きくし過ぎるとボディに収まらなくなる……。
ソレを一気に解決したのが2003年のシマノ・カルカッタコンクエスト。
変形丸形ボディは高速ギアでもハンドルが軽い!
丸形ボディをずらして重ねたボディ形状は、それまで収まらなかった大径ギアの搭載を可能にしました。
それ以降、ギアの高速化が進み、今では1:6がローギアと言われる始末。
最高速は1:10ですが、流石にやり過ぎ感が強いデス。
今後の進化については、やはりスピニンググリールと同じくギアの寿命については再考してほしいトコロ。
しかし、一番進化してほしい部分は「クラッチ」です。
クラッチなんて入り切りさえきちんとできればよいのでは?
そうなんですがやはり構造上、どうしても半クラ現象が起きてしまいます。
半クラとはスプールとピニオンギアがきちんとハマらず、中途半端な状態で少しの間回転してしまうこと。
コレはゆっくりとハンドルを回してクラッチを戻す際に起こりやすい。
それからピニオンギアの上下にあるベアリング。
アレって絶対に必要なんでしょうか?
淡水で使用しているのならあまり問題になりませんが、海水で使用しているとベアリングが錆てピニオンギアと癒着してしまい。クラッチが動かなくなります。
どうせなら、錆びないベアリングと言うのも欲しいですね。
蛇足かもしれませんが、あとはリールをロッドに装着するリールフットに革命が起きないですかね?
1世紀は形状が変わっていません。
ロッドも変わる必要があるんですが……。
以上、ここまでがピカレスクさんの原稿です。ピカレスクさん、今年もありがとうございます。なお、ピカレスクさんの2023年の抱負は「ホームページ開設予定です。8割がたできています」とのこと。公開が楽しみです。
俺が今回の原稿で思ったのは、少し前にとあるサイトで見た言葉です。それは「日本人は0から1を産み出すのは苦手だが、1を10にするのが得意だ」というものです。アブとシマノ、ダイワの関係を見ると、それはリールにも当てはまるのかなという印象を受けました。皆様はいかがでしょうか。
いずれにせよ、リールの歴史と進化、おもしろいですよね。ピカレスクさん、重ね重ね御礼申し上げます。そして来年もよろしくお願いします(鬼が笑うかな……)。
【趣味人のプロフィール】
ピカレスク
フリーランスのリール修理屋。名前の由来はピカレスク小説(悪漢小説)という悪者が活躍する小説から。
「ピカレスクは拡大解釈をすると悪者や悪人が主人公の小説やアニメ作品も含まれます。殺し屋のゴルゴ13や泥棒のルパンⅢ世、ワンピースなんかも海賊ですね。そういう、清く、正しく、美しくない主人公が好きなんです。世の中キレイごとだけじゃあつまらない。しかし、仕事はパーフェクト。そんな所から名付けました」。
リールの修理については他所でやらない類の修理も行う。リールの持ち込みや発送は大阪府泉佐野市まで。具体的な住所や日々の仕事についてはこちらをご参照ください。
最近、食べた美味しいもの/「和歌山県にある加勢田商店のカレーラーメンが美味しかった。店主さんいわく『この世で一番美味しいカレーラーメンであるカップヌードルカレー味に寄せて作った』とのこと」
最近、購入した釣り関連グッズ/「『ダイワの速攻8の字結び』を買いました」
※ピカレスク様のイラストはご本人の提供で、絵師の「ようせい999」さんの作品です。
【釣り編】
その1 まりっぺさんの巻 デカバスを狙うなら琵琶湖でワーム!
その2 かなすびさんの巻 大注目のタチウオテンヤ釣り
その3 Fresh Kitchen・戸田美保子さんの巻 料理のプロが教える美味しい魚料理
その4 ピカレスクさんの巻 プロのリール修理士が教えるリールメンテナンスの基本
その5 バッスンさんの巻 ブラックバスのキャッチ&イートのすすめ
その6 クニさんの巻 クロダイの落し込み釣り
その7 田中徹さんの巻 アオリイカのヤエン釣り
その8 ジョーさんの巻 のんびりヘラブナ釣り
その9 片山さんの巻 コマセやウキの自作のすすめ
その10 鰈ライダーさんの巻 北海道の釣り事情
その11 むぎわらノートさんの巻 シーバスの釣果を上げるコツ
その12 まるなか大衆鮮魚さんの巻 ショアジギの極意
その13 ytk*さんの巻 きっと釣れる! エギング入門
その14 Tetsuさんの巻 アジングで爆釣のコツ
その15 つりうぇいぶ!さんの巻 ヒラメの泳がせ釣りのコツ
その16 ぐっさんの巻 ロックフィッシュを釣る秘訣
その17 若旦那さんの巻 グイグイしなる『鱒レンジャー』の楽しみ方
その18 ともぞうさんの巻 身近で手軽な「管釣り」の楽しみ方
その19 岩田ジュビ漏さん(ツリデルタトーキョー)さんの巻 霞ヶ浦バスが釣れるポイント・ベスト3
その20 海釣太郎さんの巻 釣り人必見の海の水中映像ベスト3
その21 チャモロぱぱさんの巻 「両軸遠投カゴ釣り」のすすめ
その22 風の沼津さんの巻 霞ヶ浦のバスを狙うおすすめルアー・ベスト3
その23 ウッドマンルアー店長さんの巻 近畿地方のおすすめ釣りベスト3
その24 カラフト犬AKさんの巻 ヘチ釣り・やってはいけないベスト3
その25 眠りのたくまさんの巻 人狼ゲームの人気配信者が語る釣りの魅力
その26 たけだバーベキューさんの巻 釣り魚の簡単激ウマ調理術
その27 サラさん(釣りなじ)の巻 女性におすすめの楽しい釣りベスト5
その28 ウィリア八王子さんの巻 鮎を釣る基本のコツ3選
その29 たけ坊さんの巻 静岡県のおすすめ釣り場3選
その30 くろめがねさんの巻 ヒラメのサーフゲームのコツ3選
その31 まさゆっきー(M'sfishingチャンネル)さんの巻 徳島県産バサーの使用タックル
その32 なぎさんの巻 ワカサギ釣りのコツ3選
その33 y-kamiさんの巻 メバリングのコツ
その34 マークさんの巻 霞ヶ浦バスを釣るコツ
その35 ピカレスクさんの巻 知っていたいリールメンテのポイント
その36 NOFISHBOY穴澤颯さんの巻 ランカーシーバスを釣るコツ3選
その37 おででさん(おででの釣りチャンネル)の巻 釣り用車中泊のためのおすすめ車内DIYアイテム
その38 flyderさんの巻 おすすめの海釣りバイク釣行用アイテム5選
その39 スズキシゲハルさん(淡路島ライフ)の巻 淡路島の立ち寄りたいスポット
その40 ushisanさんの巻 そうだ! 小物を釣ろう!!
その41 びぜんのあぶらさんの巻 よし! 小物を釣ろう!!
その42 のぞみっちさんの巻 女性アングラーにおすすめアイテム5選【海釣り編】
その43 まーさん(つりたべ)の巻 女性アングラーにおすすめアイテム5選【淡水釣り編】
その44 笹目釣人さんの巻 荒川(とくに笹目橋付近)で釣りを楽しむ!
その45 ナガ太郎さん(釣りやりん)の巻 遠州灘サーフで釣果を上げるコツ
その46 つきのさん(つきのちゃんねる)の巻 人気釣り女子と見直す「サビキ釣り入門
その47 たけちんさんの巻 渓流のエサ釣りとルアー釣り、釣れるのはどっち⁉
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